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富士山(須走口) テレマークスキー
2016年 5月 8日

登り、3600mより上はガラスのように凍っていて緊張。滑降は、斜面を選べば楽しかった。寡雪の今年は、これにて早いシーズンエンド?
【山域】 富士     地図(クリックで拡大) →
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【日時】 2016年 5月 8日
【コース】 須走口5合目 - 大日岳・伊豆岳間の鞍部 - 東面 - 須走口5合目
【メンバー】 単独
【天気】 快晴のちうす曇り

--- 3200m付近 ---


あまり早いと雪面が緩まないため、朝寝して5時40分スタート。快晴だ。
前回(2014年6月15日)来たときと同じく、ブル道を登り、2800m付近でアイゼンを付けて雪上を歩く。今年は、前回より1か月以上早いのに雪の量は少ない。
3300mを超えると、がっくりペースが落ちる。

05月08日09時 500HPa高層天気図(クリックで拡大)  

3600mから上はガラスのように凍っていて、アイゼンの前爪だけで登るような状態。ピック付ストックを持っていなかったら、怖くて歩けない。天気が良く日差しが強いし、気温もそれほど低くないのに、なぜだろう。

地上天気図では高気圧に覆われて申し分ない。とはいえ、海風により海上の湿った空気が流入、5合目付近に層積雲ができ始めた。
500hPa高層天気図を見ると、一昨夜通過した気圧の谷に伴う寒気の抜けが完全ではない様だ。また、ジェットの軸が近く、西風が強くなっている。

富士山特別地域気象観測所5月8日の観測値

時刻気圧(hPa)気温(℃)露点温度(℃)蒸気圧(hPa)湿度(%)湿球温度(℃)
(湿球氷結時)
6642.2-1.4-29.10.610-8.5
7642.8-1.0-28.80.610-8.2
8643.4-0.3-27.20.711-7.7
9644.0-0.1-25.20.813-7.4
10644.3 0.0-25.20.813-7.3
11644.6-0.2-23.01.016-7.2
12644.7-0.3-21.81.118-7.0
13644.4-0.3-19.41.322-6.7
14644.4-0.6-23.30.916-7.4
15644.5-0.1-18.31.524-6.3

今日の富士山頂の観測データを確認してみた。また、湿球温度も調べて追記した。
この表の湿度からわかるとおり、当日は、空気がかなり乾燥していたようだ。おかげで良い天気に恵まれた。一方で、乾燥しているために湿球温度が低かったこともわかる。
日射で温められ、また雪面からの蒸発により湿度が高くなった空気は、もし風がなければ雪面付近に滞留するか斜面に沿って緩やかに上昇するため、雪面は暖湿気で薄くカバーされた状態となる。
しかし風がある場合は、雪面付近の空気は吹き飛ばされて乾燥した空気と入れ替わるため、どんどん気化熱を奪われて氷点下に温度が下がる。充分風が強ければ、湿球温度まで雪面の温度は下がってしまう。事実、氷を割ると内部の雪は柔らかかったが、表面の約1cmは再氷結してカチカチに硬かった。
これでは、剣ヶ峰からお鉢内部への滑降は厳しいだろう。
頂上付近で粗目の良い雪に恵まれるためには、気温と日照だけでなく、湿度と風の条件もそろう必要がある。風が吹くと日差しが強くても雪面は硬くなるが、今回のように湿度が低いとなおさらだ。

大日岳と伊豆岳の鞍部付近へ登りつき、今日はここを頂点とする。お鉢をわずかに南に進んで、登った斜面より一つ南側の斜面にドロップ。
やはり固く凍っていたが、先ほどの斜面よりはまし。上部はアルペンターンで、中部以下はテレマークターンを存分に楽しんだ。


予報士Fun