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北岳(3193m)、間ノ岳(3190m)・細沢カール テレマークスキー
2019年 5月25-26日

念願の間ノ岳・細沢カールを滑降。

40年も前の学生のころ、まだ本格的な登山はやってなく、自転車での林道峠越えに熱中していた。ちょうどそのころ南アルプススーパー林道(現 南アルプス林道)が開通、当時はハイシーズン以外は通行できたので、雪がない限られた期間には自転車で走れた。夜叉神トンネルからしばらく行った所で間ノ岳が大きく望め、まだ山の世界を知らなかった自分は甚く感動した。その真ん中のえぐれた地形が細沢カールで、カールというものをこのとき始めて知り、以来、独特の雰囲気を感じられるカールが好きになった。
山スキーをやるようになって幾つかのカールを滑ったが、カールを知るきっかけとなった細沢カールは訪れづらく、ずっと気になっていた。
【山域】 南アルプス
【日時】 2019年 5月25〜26日
【コース】  5月25日 快晴 夜叉神トンネル - 広河原 - 大樺沢旧登山道 - 二俣 - 八本歯のコル - 北岳 - 北岳山荘
 5月26日 晴れのち薄曇り 北岳山荘 - 中白根山 - 間ノ岳 - 細沢カール - 弘法小屋尾根 - 滝ノ沢 - 間ノ岳北側稜線3080m - 北岳山荘 - 八本歯のコルへの巻道 - バットレスeガリーの横(?)滑降 - 広河原 - 夜叉神トンネル
【メンバー】 単独


5月25日
--- 広河原から朝の北岳を望む。左が大樺沢雪渓と八本歯のコル ---


5時20分、スキーを担ぎ広河原出発。新道が大樺沢を渡る箇所はまだ橋が懸けられていないので、前回同様旧道を行く。沢の雪は2週間でかなり後退していて、なかなか沢に下りられない。
1900m付近で右の斜面が大きくザレていて、道が不明瞭になるので難儀する。その先、沢の岩の上を渡って行ったり、旧道に戻ったりして、やっと雪の上に下りられた。
デブリを縫ってスキーでシール登高。八本歯のコル下の急斜面は、かなり上まで頑張ったが、途中からスキーを担いでアイゼン登高。

05月25日09時 500hPa高層天気図(クリックで拡大)


気圧配置の動きが遅い。数日前に大荒れの天気をもたらしたトラフと寒気は日本の東南方へ過ぎ、西日本から中部地方の上空5500mには明瞭なリッジがある。また、上空に暖気が入っており、大気は安定。別の天気図(700hPa)によると、3000mの大気はよく乾燥している。
晴れるとしか言いようのない状況だが、昇温に注意。

--- 北岳頂上から間ノ岳。左下が明日滑る滝ノ沢。細沢カールは向こう側 ---


コルから北岳頂上までは、ほとんど地面が出ていた。この登りで疲れが出て、最後はヘロヘロ。でも、頂上からの遮るもののない素晴らしい景色に癒された。
まだ無人の北岳山荘冬期部屋に宿泊。東斜面を滑ろうと思っていたが、雪が切れている様だったので、夕方までおとなしく時間を潰す。日没時にピンク色に染まった富士山や、暗くなってからの甲府盆地の夜景が部屋から見え、美しかった。


5月26日
--- 雪のない稜線を歩く。中白根山頂にて ---


晴れているが巻雲が多い。今日は地上高気圧の後面にあたり、暖気が流入してくると思われるので、午後の天気が心配だ。
雪が緩むタイミングを見て、ゆっくりと7時に北岳山荘を出発。一部を除きほとんど雪のない稜線を、スキーを背負って間ノ岳へと歩く。プラブーツで歩くためか、コースタイムよりも時間がかかった。

---細沢カール底に向かって滑降 ---


間ノ岳山頂でスキーを履き、憧れの細沢カールへドロップ。圏谷壁とモレーンに囲まれたカール底に向かって滑り、爽快。ただし、下部は先日の大雨のせいか、縦溝が多い。
これより下、横尾期にできたU字谷(今いるカールは涸沢期にできたもの)は縦溝が酷そうだったので、ここで滑降を終えることにした。

--- 細沢カールのモレーン。弘法小屋尾根への登りにて ---


カールの中にいると不思議な気持ちになるのは、地形が氷河期の記憶を留めているからだろうか。
カール底で丸い壁を見ながら休憩後、シールを貼って弘法小屋尾根の鞍部へ登る。

--- 弘法小屋尾根の鞍部から、滝ノ沢の快適な斜面。正面は北岳 ---


リッジ状の狭い鞍部でシールをはがし、今度は滝ノ沢のU字谷へドロップ。こちらは雪面が滑らかで実に快適。登り返さなければならないのに、沢がゴルジュ状になる手前の2560m付近まで滑ってしまった。
雪が多ければさらに少し下って北岳山荘付近へ登れそうだが、途中で雪が切れているのは八本歯のコルから昨日確認済み。スキーを背負っての藪漕ぎは嫌なので、山頂近くまで登り返した。

05月26日09時 500hPa高層天気図(クリックで拡大)


地上天気図では、今日も昨日同様、南の大きな高気圧に覆われているが、高層天気図を昨日のものと見比べると、リッジが昨日ほどはっきりしてない。湿度が昨日より高いため、日射による昇温で、局所的な悪天に注意が必要かも。
朝の巻雲が巻層雲や高層雲に変わり、空はどんよりしてきたが、積雲系の雲は見当たらないので、熱による局所的な低気圧等の心配は当面なさそうだ。この後しばらくすると、天気は回復してきた。

--- 一晩お世話になった北岳山荘と北岳 ---


稜線に出てまたスキーを担ぎ、北岳山荘にデポした荷物を回収した後、八本歯のコルへの巻き道をたどる。雪が多ければ通れないが、雪はほぼ消えていた。
八本歯のコルの少し上から、大樺沢へドロップ。初めは快適だが、デブリや縦溝が多く難儀。さらに高度を下げ傾斜が緩くなると、先日の大雨でできた凸凹が酷く、足の疲れもあって、最後はスキーを諦めて歩いた。
雪が無くなってからは昨日の登りと同じルートを歩き、広河原へ着いたときは既に日没時刻に近かった。


予報士Fun